2008-06-01 弘法大師
_ かつて広島の原爆記念館で四国霊場会僧侶二十数名で戦争の犠牲者の追悼法要をしたとき私は涙でお経がつまった経験がある。その時、私は弘法大師お大師さんが、その情景を見て涙しておられるのを見たからである。
お大師さんが今、口を開かれたらどのように言われ、どのように行動されるであろうか。そのことを想う時、私たちは身が引き締まるのである。
_ スマトラ沖大地震のとき、私たちは「平和と笑顔の会」を結成しタイの被災者の救援に乗り出した。そして今回が五度目の訪問である。今回は、内乱で多くの犠牲者を出しているビルマ(ミャンマー)の人々の難民キャンプに入ることができた。そのことは同行二人今月号に詳しい。
私たちの国、日本は幸い今は平和に暮しているかに見える。しかし六十数年前には戦争をしていた。遠くビルマでも戦いをしかけ、独立を援助するといいながら多くの血を流した。
そして世界では戦争はなくなったわけではなく、ビルマやチベットでは弱い人種が圧迫を受けている。殺されたり、村を追われていたり、言葉を使えなかったり、地位を追われたりである。
そのひとつの現場である難民のキャンプに私たちは入った。どうして同じ人間が戦い、あるものは苦難の境遇に閉じ込められ、恐怖の中に生きざるを得ないのか。そのことがありありと身に沁みて感じた旅であった。
私たちは難民キャンプの子どもたちの遊び場の提供とタイに避難して生きる子どもたちの教育私設の立て替えの援助を決めた。
ちょうどその頃、ビルマのデルタ地帯ではサイクロンが猛威を振るい、十万人以上の人が亡くなり、百万人以上の人が家を失ったり避難生活を余儀なくされた。
難民キャンプの人も情報を得た人は「親戚の家も知人の家もみんな吹き飛ばされ、人々は行方不明だ」と不安げに話していた。「私もそうだ」という若者もいた。
今、必要なことは競争し合うことではなく助け合うことだと真剣に想った。
_ ビルマを救援
ビルマ(ミャンマー)の軍事政権は被災者を助けようとしない。外国の援助を拒み、救済を後回しにしている。外国の報道機関が入り、救援隊が入り、国民を見殺しにする姿を見せたくないのだ。
そのために何十万人という被災者が水に困り、食べ物に困り、住む所、着るものに困っている。日本の阪神震災とは比べ物にならない政府の非道である。日本では孤独問題や復興は政府が怠慢したが生命を脅かすことはなかった。ビルマでは生命が脅かされ放置されている。
何とか救援援助をしたい。
ある人が言った。「援助をするなら継続してしなさい」と。スマトラ沖大地震の救援活動は今年で五回目、私は四度目の訪問をした。
七十軒あまりの小さな村にお米を配ることと、親を亡くした子どもの学資援助である。
家々を訪問するとみんな私の事を覚えていて、はにかみながら笑顔で迎えてくれる。一年にたった一度の出会いではあるが嬉しいことである。
そもそも戦争の反省と貧困を考えるために始めた活動である。戦争に関しては日頃から国境を越えて友人関係があれば殺し合うことなどできないというのが方針であった。
ここに来て友人が沢山できた。もうお互いに銃を向け合うことなどできないだろう。平和が一番だ。
_ 差別の問題
格差の問題
弱い人々は常に足許を見られて損をし、虐げられる。タイの南部ではビルマ人とモーケン人が下層の労働を低賃金でしていた。
北部はもっとひどく、一日二十バーツから百バーツ、日本円で六十円から三百円で仕事していた。それも週に二、三度あるかないかの仕事だった。
世界が幸福になって欲しい。
_ 救援の旅にて
仏教の核心
_ 宗教は問題にしない
_ メーソットではイタリアのグループが昼食が無料で言葉を教える学校を運営していた。ビルマで24校タイで9校である。その説明をしてもらったがアンさんというタイ人はこう言った。
「私たちは宗教を問題にしません。キリスト教でもいいし仏教でもいいし、ムスリムでもいい。それを問題にしていたら救援はできません。その人が何を信じるかは私たちには関係ありません」と。
そして私たちも同感である。「子どもたちは腹を空かせて学校に来るという。朝飯も夕飯もたぶん食べていないから空腹で来る。だから朝から腹がへって落ち着かない。昼飯を食べるとやっと勉強に身が入るが腹持ちの悪いめん類などのときは一時間もするとそわそわして勉強にはならない」という。
食事さえろくにできていない困難な時に、宗教がどうのこうのは関係ない。問答無用である。助かるか助からないか。助けるか助けないだけである。
釈尊も「私はこれを説くということがない」と断言している。問題は何かを説くことではなく皆が幸福になることである。
_ これは利権屋と優しい人間との戦い
自分の内部の優しさと闘争心の戦い であると想った。 食べていけない人々は怠惰であるからだという言い分があるがそれは違う。世界は昔はどこも楽園でありモーケン人やカレン人のように自然の恵みを採って暮していた。今は、社会という有機体の良い地位を得ることで贅沢に贅沢を貪っているのが利権階級である。利権屋は貪るから下層の下働きする人々を必要とする。 釈尊は矢を抜けという。 新刊仏教参照にして欲しい。
2008-06-02 続ビルマ・チベットがつらい
_ 続ビルマ・チベットがつらい
_ 事もあろうに、苦難の人々、チベット人とビルマカレン人の多く住む所で大災害が起こった。大地震とハリケーンである。共に十万人規模の死者が出ている。
国が援助隊を拒んでいるという点でもこの二つの災害は似ている。特にビルマ(ミャンマー)では百万人以上の人が困っているというのに軍事政権が救援隊の入国を妨げている。
人殺しの国だ。四川省もそうでないとは言えない。外国のマスコミが入るのを嫌うのか、民間の援助や国際的な援助を拒んでいる。
国というのはそもそもは国民を守るのが本務である。というより国家とは国民の共同体である。国民主権といわれるように、国民が国なのである。しかしどちらの国も国のための国であるように想われる。誤解を恐れずに言うならば国を乗っ取った人々のための国なのである。利権国家という。国民を守らない横取りのための暴力装置である。故人は国家とは大泥棒だといった。
然し、そんなことを言っている場合ではないだろう。何とかして人々を助けたい。そして国民のための国ができることを臨む。
戦争はいけない。助け合いこそが今求められている。
救援訪問の道々その想いが強まった。広がる格差。貧困と裕福。弱者と狂暴。そしてそこに襲いかかる天災や疫病。
人間はいま闘争している場合ではない。小事を捨て、少欲知足に甘んじ、助け合う時である。
天災の事由をそのように考えるほか納得はできない。何故に弱者に天は斧を振りかざし痛めつけるのか。それは私たちの助け合いの心を試しているとしか考えられない。それほど事態は差し迫っている。
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2008-06-11 ビルマ難民キャンプスマトラ救援
_ 弘法大師お大師さんは偉大な人と言われます。その偉大さは人を見捨てない所ではないでしょうか。先日も悩み相談に電話が入いりました。そして今晩泊まる所がないというのです。六百円しか所持していないというし、こちらも困ってしまいます。お遍路さんならお泊めするのですが、見ず知らずの人に突然このように言われても途方に暮れるばかりです。
結局は追い返してはならないというお大師さんの教えにしたがって一宿一飯を用意しました。お四国遍路はこのようにして綿々と続いてきたのですからと想いながらいたしました。
お大師さんが今も四国の山野を歩き続け、人々の救済をしているということはこのようなことを言うのでしょう。
さて、六月十五日はお大師さんの誕生日。もしもお大師さんが今日の世界を観るならどのようにされるだろうかとの想いもあって東南アジアの地震災害の救援を始めて四年目になります。
_ スラムの体験
_ 二十数万人が亡くなったというスマトラ大地震の救援を始めたのは、私としては戦争の反省とスラム街の経験が基底にありました。大学の時、東九条という京都のスラム街で子どもたちと遊んだ経験があります。その経験はスラムという過酷な現実を身近なものに感じ、自分の育った環境がいかに恵まれたものであったのかということを深く思い知りました。自分が当たり前と思っていたことは実は当たり前ではなく、大変恵まれた状況だったということです。
家がある。子どもの部屋がある。夕飯がある。親が落ち着いている。お小遣いがもらえる。そんなことは世界的には当たり前ではありません。
自分の部屋があって、食事に困らなくて、エアコンがあったり、塾に行けたり、親が暴力を振るわなかったりということは、当たり前のことではないのです。
環境がよければ良いという言うわけではありません。しかし、決定的に悪い時には、体も心も歪むことが多いでしょう。お大師さんもそのことに言い及んでいます。環境を整え、勉学の機会を平等にし、そして心を修練しなさいと説いています。
_ 戦後六十年
_ 貧困やスラムの問題だけでなく、戦争や国家の抑圧の問題もあります。四年前は折しも戦後六十年でした。石手寺にはビルマ戦没者の慰霊塔であるパゴダもあり、硫黄島の戦死者追悼碑もあります。
アジア太平洋戦争では二千万人以上の人が死んだといいます。人間が人間を殺すのが戦争です。平和であれば死ななくて良かった人々です。
私たちはアジアで友だちをつくり合い、お互いに親しくなれば戦争はしないと確信します。親しくなく敵意を持つから戦争が起こるのです。日頃から行き来をして、助け合いをして、親しい友だちを想像できるならば、爆弾を投下することなどできないはずです。
アジア太平洋戦争は防衛の面もありますが侵略の戦争でした。深く反省し、武器を用いない新しい世界平和の営みをする必要があります。そんな想いで、多くの僧侶方にも参加して頂き震災の救援活動を始めたのでした。
二〇〇五年四月に始めてタイの南部のナムケンという街に行きました。漁港であり鈴の積出し港で津波では四〇〇〇人が亡くなりました。近くのパクウィーブでは少数民族のモーケン族が村ごと壊滅していました。私たちは両親を亡くした子どもたちの学資支援と学校の支援を始めました。また、ナムケンには多くのビルマの出稼ぎ者や難民が暮しており、彼らの子どもは学校に行く機会がありませんでしたので学校の支援をしました。校舎となる家の家賃と備品の提供です。
そして今回、五度目の訪問と支援をしました。今回は、ナムケンのビルマ人子ども学校のリーダーの移動にともないメーソットにも行くことになりました。メーソットはバンコクの北、六〇〇キロにあるビルマとの国境の街です。リーダーはその近くのビルマ人難民キャンプに居るということでした。
_ ビルマの難民キャンプ救援
ナムケンで約百人のビルマ人の子どもたちの学校(食事の支給と語学の教育)を始めた女性リーダーは少数民族の援助をしたということでパスポートの延長がならず、難民キャンプに入っていました。友人の仲介で彼女と会えるというので、私たちはバンコクから六〇〇キロのメーソットに行きました。
電話をすると今から私たちのいるゲストハウス(安宿)に来るといいます。二十分後私たちは再会しました。「ハロー」「サワッディーカー」本当はカレン人ですから「ニレゲ」と挨拶します。
難民キャンプに収容されたと聞いていましたから二度と会えないかと思っていましたので、感動的でした。そして私たちは彼女のまた友人のはからいで難民キャンプにも行きました。
このキャンプには約二万人が住んでいます。彼女は言います。「ナムケンの子どもたちはまだましです。ベターです。ここの子どもたちはキャンプから出ることもできないのです。もう三十年間もここに住んでいる人もいます」。
私たちは案内されてずっと奥の集落へも入りました。驚いたことにインド人もいます。彼らの集落はみすぼらしいものでした。ほこりっぽく、家は崩れかけていて小さなものが多く、衛生的にも良くない状況でした。
家々は所狭しと林立し、遊び場もなく、住むのが精一杯という環境です。家は山の急斜面へとへばりつきながら頂上へと伸びていき、遠い所は何百メートルも急斜面を歩かねばなりません。
当然、検問所があり村人は自由に出入りできるわけではなく、許可が要りますし、一般のものは許可されないということでした。
名前をまさとしと名乗る日本語のできる青年が言いました。「本国ビルマへ帰った人もいる。一家は軍隊に殺された」と。
少数民族のカレン人やインド人やムスリムの人もいます。彼らは帰る所がないのです。国が彼らを守るのではなく追い出し、帰れば迫害するということです。
彼女は言います。「二年以内にはアメリカかどこかに亡命して、国籍を得て、そしてまた戻ってきて人々を助けたいと思っている」と。
彼女は子どもたちの遊び場をつくりたいといいました。私たちは、そのための資金援助しました。また、メーソットの学校の援助をしました。
_ ビルマで戦争反省し平和を祈る
まさとしが言います。「日本の兵隊は多くのビルマ人を殺したが、その後日本に帰った。そしてまたビルマにやって来て学校を建てたりいろいろな援助をしている人がいる」と。「彼らは戦争を後悔して来ているのだろうか」と問うと「そうだ」と答えました。またメータオ・クリニックという病院に行きましたが、「ここは無料なのか」と聞くと「フリー(無料だ)」と答える老人がいました。彼も「もと日本兵がやって来ていろいろな援助をする」と話しました。
メーソットの街には今も当時の日本兵が住んでいると聞きました。戦争の記憶や傷跡は今も残っていました。
私たちはタイとビルマの国境の橋の上で戦死した人々を悼み、またビルマの軍政で殺された人々を悼み、ヤンゴン地域でのサイクロンで死んだ人々を悼み、世界平和を祈りました。
_ スマトラ大地震救援
次に私たちはナムケンの街に向かいました。ここは私たちのグループは五度目の訪問です。
約二十人の親を亡くした子どもさんの援助に回ります。行く先々で子どもたちは私たちを覚えていて笑顔で迎えてくれました。
娘といっしょにバトミントンをして楽しんだ子。当時は小さかったのに四年間でお父さんより背が高くなった子。当時は船の手伝いをしていたが今はホテルに勤めバイクを買った子。彼には就職祝いを渡すと彼は涙していました。
しかし、両親を亡くした女の子は祖母さんと二人暮らしで収入が全くなく、家は空っぽで服も汚れ、文房具と学費を渡しましたが祖母さんは字が書けず彼女が書きました。日本でも貧困が問題ですが底の知れない貧困の淵を垣間見たようでした。
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2008-06-12 生き残る人間と去る人間
_ しかし、どの人間が生き残り、どの人間が去ったかは分からない。
その理由は、こうである。
この世だけが世界なら、残ったものが残った
しかし
あの世や真実の世界があるなら、そうとは言えない
それでも
世界に痛みがあるということは事実であり
そのことに目を向けることがある
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2008-06-21 わたしの身代金
_ アッダカーシー尼
25わたしの身代金は、カーシー国の所得にも匹敵した。町の人たちはそれをわたしの値段とし、わたしを無価の者(値段のつけられない者)とした。
そのとき、わたしは、自分の容色を嫌悪した。
2008-06-22 同じ名前のジーヴアーと呼ぶ者、すべて八万四千人のだび娘が
_ ウッビリー尼
51ブッダは語った「なんじは、『娘よ、ジーヴアよ』といって、林のなかで泣き叫ぶ。ウッビリーよ、なんじ自身を知れ。同じ名前のジーヴアーと呼ぶ者、すべて八万四千人のだび娘が、この葬場で茶毘に付されたが、それらのうちのだれを、そなたは悼むのか?」
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